ついこの間、彼女と廃墟に行った時の話。
たいして怖くないうえ、無駄に長いけど聞いてくれ。
俺の彼女はちょっと変わってて、幽霊やらUMAやら都市伝説やら、とにかくオカルト全般が好きなのね。
そんな彼女だから、廃墟探索も結構ノリノリだったわけ。まぁ、最初は「それって不法侵入じゃん!」とかって渋ってたんだけどさ。
で、その廃墟ってのが、地元でも割と有名な場所でさ。他殺だか自殺だか忘れたけど、何かで死んだ女が出るって噂のホテル。とっくの昔に潰れたのに、何故かちっとも解体工事が進んでないのね。
ベッドとかもまだ残ってるから、カップルで来てそのまま……ってのもあるらしい。だから俺としてみれば、そういう展開もちょっとは期待してたんだよ。
まぁ、実際はベッドが汚すぎて、それどころじゃなかったけど。
その日はお互いの仕事が終わってから向かったから、問題のホテルに着く頃には0時をとっくに過ぎてた。
見た目は想像してたより不気味だった。その時点で既に帰りたくなったけど、誘ったの俺だし、何より彼女の手前そんなこと言えないし。
それで怖々、正面玄関を確認してみると、鍵が壊れてて、拍子抜けするほどすんなり侵入できたんだわ。
中は荒れ放題で、いつのだよってツッコミたくなるレベルに古いエロ本、ルームキー、壊れた黒電話、ガラスの破片、ビリビリの布団……、とにかくいろんなもんが散乱してた。
ここまでくると恐怖も薄れて、俺はなんかお宝ねぇかなって、あちこち漁ってた。
彼女も彼女で、「この黒電話が急に鳴り出したら怖いね」とか、「私達の会話を録音したら、いるはずのない第三者の声が入ったりするかな」とか、若干笑えないジョークを言いつつ、持ってきたカメラで撮影してたな。
時間的には1時間くらいいたと思う。特に怖いことなんて起きなくて、起きたことを強いて言うなら、落ちてた犬のうんこ踏んだくらい。すげぇ臭かった。
で、飽きてきたからそろそろ帰るかって話になって、来た道を戻りだしたのね。この時、初めて異常があった。
なんつーか、寒いんよ。いや、11月後半で天気も悪かったから、寒いのは当たり前なんだけど、それにしては寒すぎると言うか。そもそもちょっと前までそんなことなかったし、突然寒くなった感じ。うまく言えん。
彼女を見たら平然としてて、「寒気感じてるの俺だけ?」って、怖くなってさ。
彼女はそんな俺を心配してくれて、その日はそれで解散になったんだわ。
でも、帰ってからも寒気が消えなくて、なんかだるくなってくるし、何もする気になれなくて、そのままベッドに転がってたのね。
ひとり暮らしなのに、部屋に誰かいて、じっと見られているような気配がしてさ。
でも次の日も仕事だし、気のせいだって言い聞かせて、電気つけたまま寝た。無理矢理寝た。
ぶっちゃけると、何かつれてきちゃったんじゃないかって、すげぇ怖かった。
だけど朝にはその気配もすっかりなくなってて、やっぱり気のせいだったんだなって、釈然としないけどそう思うことにした。
それで、数日後。彼女が「そう言えば」って話してくれた。探索をした日の夜、妙な夢をみたらしい。
真っ暗な俺の部屋で、俺が布団に寝てるんだけど、それを見つめる髪の長い女がいる。
はじめは俺の足元に立ってるだけだった女は、やがて俺を踏みつけながらゆっくりと頭の方へ移動しはじめた。この時、俺が唸りだしたらしい。が、彼女は「あんな場所へ行ったから変な夢をみてるのかな」とスルー(ひでぇ)。
呑気な彼女を尻目に、女は俺の胸のあたりまで移動してしゃがみこんだ。そして俺の首へと腕を伸ばしたあたりで、彼女も「たとえ夢だとしても、ここで助けないのは人としてダメなんじゃないか」って思ったらしい。
女の腕を掴んで引っ張ってみたけど、びくともしない。その間に女は俺の首を、両手でキリキリと締めはじめた。本格的に苦しみだした俺を見て、さすがの彼女も焦ったらしい。
俺の首から女の指を外そうとしてみたり、女の肩を強めに揺すったりしても、女は首締めをやめようとしない。
そこで彼女は何を思ったのか、女の長い髪を掴んで、思い切り引っ張ったらしい。そしたら女はようやく手を離した。
彼女は女の髪を引っ掴んだまま玄関まで歩き、ドアを開けると女を外へと放り投げた……ところで目が覚めたらしい。
俺もそこで初めて、あの夜に変な気配を感じてたことを話したんだけど、彼女は「女の喧嘩はまず髪を掴めって言うけど、本当なのかもね」って笑ってた。
俺が感じてた気配はこの女だったのかなとか、それが消えたのは彼女のお陰なのかなとか、どっちもただの思い過ごしなのかな、とか色々考えた。
けど、得体の知れない女の髪を掴んで外へ放り投げた、彼女自身が一番怖いんじゃないか? というのが結論。
たいして怖くないうえ、無駄に長いけど聞いてくれ。
俺の彼女はちょっと変わってて、幽霊やらUMAやら都市伝説やら、とにかくオカルト全般が好きなのね。
そんな彼女だから、廃墟探索も結構ノリノリだったわけ。まぁ、最初は「それって不法侵入じゃん!」とかって渋ってたんだけどさ。
で、その廃墟ってのが、地元でも割と有名な場所でさ。他殺だか自殺だか忘れたけど、何かで死んだ女が出るって噂のホテル。とっくの昔に潰れたのに、何故かちっとも解体工事が進んでないのね。
ベッドとかもまだ残ってるから、カップルで来てそのまま……ってのもあるらしい。だから俺としてみれば、そういう展開もちょっとは期待してたんだよ。
まぁ、実際はベッドが汚すぎて、それどころじゃなかったけど。
その日はお互いの仕事が終わってから向かったから、問題のホテルに着く頃には0時をとっくに過ぎてた。
見た目は想像してたより不気味だった。その時点で既に帰りたくなったけど、誘ったの俺だし、何より彼女の手前そんなこと言えないし。
それで怖々、正面玄関を確認してみると、鍵が壊れてて、拍子抜けするほどすんなり侵入できたんだわ。
中は荒れ放題で、いつのだよってツッコミたくなるレベルに古いエロ本、ルームキー、壊れた黒電話、ガラスの破片、ビリビリの布団……、とにかくいろんなもんが散乱してた。
ここまでくると恐怖も薄れて、俺はなんかお宝ねぇかなって、あちこち漁ってた。
彼女も彼女で、「この黒電話が急に鳴り出したら怖いね」とか、「私達の会話を録音したら、いるはずのない第三者の声が入ったりするかな」とか、若干笑えないジョークを言いつつ、持ってきたカメラで撮影してたな。
時間的には1時間くらいいたと思う。特に怖いことなんて起きなくて、起きたことを強いて言うなら、落ちてた犬のうんこ踏んだくらい。すげぇ臭かった。
で、飽きてきたからそろそろ帰るかって話になって、来た道を戻りだしたのね。この時、初めて異常があった。
なんつーか、寒いんよ。いや、11月後半で天気も悪かったから、寒いのは当たり前なんだけど、それにしては寒すぎると言うか。そもそもちょっと前までそんなことなかったし、突然寒くなった感じ。うまく言えん。
彼女を見たら平然としてて、「寒気感じてるの俺だけ?」って、怖くなってさ。
彼女はそんな俺を心配してくれて、その日はそれで解散になったんだわ。
でも、帰ってからも寒気が消えなくて、なんかだるくなってくるし、何もする気になれなくて、そのままベッドに転がってたのね。
ひとり暮らしなのに、部屋に誰かいて、じっと見られているような気配がしてさ。
でも次の日も仕事だし、気のせいだって言い聞かせて、電気つけたまま寝た。無理矢理寝た。
ぶっちゃけると、何かつれてきちゃったんじゃないかって、すげぇ怖かった。
だけど朝にはその気配もすっかりなくなってて、やっぱり気のせいだったんだなって、釈然としないけどそう思うことにした。
それで、数日後。彼女が「そう言えば」って話してくれた。探索をした日の夜、妙な夢をみたらしい。
真っ暗な俺の部屋で、俺が布団に寝てるんだけど、それを見つめる髪の長い女がいる。
はじめは俺の足元に立ってるだけだった女は、やがて俺を踏みつけながらゆっくりと頭の方へ移動しはじめた。この時、俺が唸りだしたらしい。が、彼女は「あんな場所へ行ったから変な夢をみてるのかな」とスルー(ひでぇ)。
呑気な彼女を尻目に、女は俺の胸のあたりまで移動してしゃがみこんだ。そして俺の首へと腕を伸ばしたあたりで、彼女も「たとえ夢だとしても、ここで助けないのは人としてダメなんじゃないか」って思ったらしい。
女の腕を掴んで引っ張ってみたけど、びくともしない。その間に女は俺の首を、両手でキリキリと締めはじめた。本格的に苦しみだした俺を見て、さすがの彼女も焦ったらしい。
俺の首から女の指を外そうとしてみたり、女の肩を強めに揺すったりしても、女は首締めをやめようとしない。
そこで彼女は何を思ったのか、女の長い髪を掴んで、思い切り引っ張ったらしい。そしたら女はようやく手を離した。
彼女は女の髪を引っ掴んだまま玄関まで歩き、ドアを開けると女を外へと放り投げた……ところで目が覚めたらしい。
俺もそこで初めて、あの夜に変な気配を感じてたことを話したんだけど、彼女は「女の喧嘩はまず髪を掴めって言うけど、本当なのかもね」って笑ってた。
俺が感じてた気配はこの女だったのかなとか、それが消えたのは彼女のお陰なのかなとか、どっちもただの思い過ごしなのかな、とか色々考えた。
けど、得体の知れない女の髪を掴んで外へ放り投げた、彼女自身が一番怖いんじゃないか? というのが結論。